本展では、発酵菌と人々の暮らしについて、農作物を育む土壌、島の風土、微生物の棲家となる木桶、の3つのフィールドを取り上げて、発酵のネットワークを紹介しました。最後の章は、日本人の暮らしに欠かせない食品であるしょうゆやみそに注目し、発酵が暮らしに息づいている様子を振り返ります。
戦後、私たちの暮らしはプラスティック製品の普及や生産技術の向上の中で、より便利で、より安価に安定した品質の商品を得ることが出来るようになりました。
一方で、経済価値を重視した生産プロセスは、より高く売るための商品価値を求め、地域や環境に貢献することや、伝統を守ることなど、お金に変えられない価値(有用性)を見落として来たかもしれません。「食べる」ことは「生きる」こと。心身の健康は日々の根源的な暮らしの積み重なりにほかなりません。足元の暮らしや食への関心は、丁寧な日常の営みにつながっていきます。