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血の通う義足づくり

臼井二美男のしごと

義肢装具士の臼井二美男(鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター)は、ユーザーに向き合い、対話と熟練の職人技、経験によって培われたカンを通して一人ひとりにフィットする義足を日々製作しています。
ユーザーにとって初めて義足で歩くのは容易ではなく、トレーニングが必要です。臼井はユーザーそれぞれのタイミングで「走ってみない?」と語りかけ、仲間と走るグラウンドへ誘います。身につける人の自信を引き出す義足づくりの舞台は、工房の中にとどまりません。

ユーザーの足の状態に合わせて、石こうモデルを手の感覚で修正して仕上げる

断端を石こう包帯でかたどり、修正が必要な所にマークをつける

石こうを流しいれ、石こうモデルをつくる

熱可塑性プラスチックで仮合わせ用ソケットを作る

ソケットを熱硬化性液体樹脂で固める

完成したソケットに部品を取り付ける

「はいているのを忘れるような義足を作りたい」

スタートラインTokyo

臼井二美男が1991 年に立ち上げたスタートラインTokyo(旧:ヘルスエンジェルス)は、義足ユーザーと義肢装具士、理学療法士、コーチやメンバーの家族も参加し、仲間と義足で走る活動を続けています。
幼少期から義足を使うメンバーの一人は、 活動に参加してはじめて、身体が風を切って「走る」感覚を知ったといいます。走ることに挑戦し、義足を使いこなすことは、身体能力だけでなく「横断歩道がいつもより速く渡れた」「きれいに歩けるようになる」と、一人ひとりの日常の自信にもつながっています。

スタートラインTokyoの活動から 義足で地面を蹴って、前へ進む

写真はすべて 越智貴雄/カンパラプレス