ギャラリーエークワッドでは、公募による参加者100人がレンズ付きフィルム「写ルンです」を使って「人・建築・都市」を記録する、というイベントをシリーズ企画として開催して参りました。2006年の東京駅に始まり、浅草、東京タワー、築地、上野、深川、日本橋、そして昨年は創設140周年を迎えた東京大学を抱える本郷地区を対象とし、これまで都内8か所を巡りました。
本年は「東京North」を対象地とし、ゴールデンウィークを撮影期間としました。4月27日に参加者にお集まりいただき、写ルンですのお渡しと、この企画を第1回目からご指導いただいている木下直之氏、DOCOMOMO Japanの代表理事である渡邉研司氏のお話を伺う機会としました。
今回は公募による100人に加えて、新たにギャラリーでお招きした20人のアーティストや写真家等が撮影会に参加されています。子どもさんから専門家まで、皆が同じ撮り直しのきかないツールを使うということもこの企画の面白さです。
ところで、東京の歴史を遡れば、江戸時代から火事、水害、震災、戦災による破壊と復興が繰り返され、また政治経済の変動によってもその相貌は大きく変化してきました。1964年のオリンピック前後の東京の変貌は顕著な例です。来年は2度目のオリンピックイヤーです。このタイミングを捉え、これまでの企画の集大成として、2019年、2020年と2年連続で「東京」をテーマとすることにしました。
東京には新しい建物、街区だけではなく、1920年代から1960年代にかけて建設されたいわゆるモダニズム建築も残っています。この機会に、これら文化遺産に対して焦点を当て、保存再生の意義についても考えていきたいと思います。
2回に分けて東京を捉える、ということで、どのように切り分けるかは大きな課題でした。今回はその手掛りとして、東京を東西に走る甲州街道という江戸時代に開設された幹線道路や中央線・東西線といったインフラが東京を南北に仕切るように構成されていることに着目しました。また街や建築の集積度に偏りが生じないようにNorthとSouthという切り分けとしました。
大小の変わりゆく風景、その中に潜む変わらない姿、大切にしまっておいたとっておきの場所、大都市の持つ匿名性、雑踏、昼夜の変貌、改めて知る東西の長さ、平成から令和への改元の姿、参加者の皆様からご提示いただいた「東京North」は予想をはるかに超えて饒舌でした。ご来場いただいた皆様が、この機会に新たな東京の魅力を発見されることを期待しています。
最後になりますが、本企画に対しまして、お力添えいただきました関係各位、ご参加いただきました皆様に、深謝申し上げます。
ツールへのこだわり;デジタル全盛の時代に、敢えて、アナログの「写ルンです」を使うことについて
一過性による真剣勝負と時系列を大切にする。そして誰もが使える同じツールで撮影すること。
デジタルカメラとは異なり、その場での確認ができず撮り直しができないこと。
写した写真はその日の時間の流れを忠実に記録し時系列に並んでいること。
年齢、性別、プロ・アマなどを問わず、皆全く同じ性能のカメラを使うこと。