日本橋の真上を首都高速線が塞ぐように走る。東海道の起点の橋に掛かる天蓋の風景である。しかし、何とも失礼千万な代物である。ケシカラン!という抗議は、東京オリンピックに押し切られてしまったのである。その天蓋は、還暦を迎える歳になって、取り壊されることになったようである。その理由は、またも次の東京オリンピックか!と勝手にガッテンしていたらそうでもないらしい。しかし、この風景を眺められる残り時間は少ない。自分自身の歳を考えると、現在の不敬な風景を記録しておくのも、一つの務めだろうと、覆いかぶさる首都高速の架橋を東は江戸橋から西は呉服橋までの風景の記録を試みた。
1939年福井県生まれ。福井大学にて染色化学を専攻、化粧品会社に勤務。1971年写真家を目指しフリーランスとなる。主な作品集。『俗神』(オットーブックス社)『砂を数える』(冬青社)『ヒロシマ』(佼成出版社)など。2007年度土門拳賞受賞。現在大阪芸術大学教授。