古代瓦の作り方は大きく二つある。一つは桶巻づくり、もう一つは1枚づくりである。両者の違いは平瓦の作り方にあらわれる。桶巻きづくりは、大きな円錐台形の桶に捏ねた粘土を巻付け、叩き締めて成形し、4分割して一度に4枚の平瓦を作る。一方、1枚づくりは、瓦の大きさにした粘土板を蒲鉾形の型などに1枚ずつ乗せて成形する。造瓦技術が伝わった飛鳥時代当初は桶巻づくりで、熟練した職人が必要であったが、大量生産が求められた奈良時代に入ると少々の訓練で工人を養成し1枚ずつ手早く作っていく1枚づくりが考案され、以後、日本の平瓦づくりの主流となる。ここでは復元考証をもとに古代の桶巻づくりの技法を紹介する。

1. 土づくり

瓦づくりには原料となる良質な粘土(原土)選びが必要である。粘土は地元の山や畑、水田から採掘し寝かせた後、適量の水を加えながら素足で丹念に踏みつけて土と水をなじませる(土打ち)。土打ちした粘土は「タタラ盛り」を行い、瓦の大きさや厚さに合わせた板状の粘土(荒地)を切り出す。

粘土採掘現場(水田) / 2017年愛知県安城市

1)必要な大きさに足で踏み固めながら粘土を直方体に盛る。

2)一定の大きさになれば、事前に敷いておいたひき紐を下から上に引き上げて4面すべて余分な粘土を切断する。

3)瓦1枚分の厚みに整えた定規を左右の長側面に積み上げ、それを基準に1枚ごとに糸で引き切断する。

4) タタラ完成

2. 形づくり

1)作業台(馬)に円筒形の木型を差し込み、濡らした麻袋を被せる。

2)麻袋の上に、粘土紐または粘土板(荒地)を巻き付けて、手で平らにならす。

3)玉縁部分に印を付け、粘土紐を巻き付ける。一定の厚みになるよう、手でなじませ、回転台を回しながら、なで板で表面を整え、叩き棒で叩き締める。玉縁は肩木を用いて整え、この作業を2〜3回交互に行う。

4)回転台から木型をまるごと抜き取り、麻布袋を取る。適度に乾燥させた後、円筒の中に切鎌を入れ、下から上へ2分割し、小口を整える。

1)写す紋様の大きさに合わせて粘土を丸く伸ばし、木型に押し込み、瓦当部分をつくる。

2)乾いてない丸瓦を瓦当の裏面に押し付け、瓦当部分と丸瓦を接合する。

3)左右両側の枠を外し、接合部分が離れないよう、なで板で丁寧に整える。

4)形が崩れないよう注意をはらいながら木型からはずし、全体を整える。

1)桶に塗らした麻布袋をかぶせる。桶と麻袋が密着するよう、濡らした粘土を布の表面に擦り付ける。

2)麻布袋に粘土を巻付ける。長細い粘土紐を下から上へ巻付ける方法(左)とタタラから切り出した粘土板(荒地)を何枚か繋げる方法(右)がある。

3)なで板で表面を整え、たたき棒で粘土を締める作業を2〜3回交互に行い、一定の長さになるよう上端の余分な粘土を木ベラ(あるいは糸)で切り落とし、下面にも切り込みを入れ、桶ごと持ち上げて回転台からはずす。

4)桶を内側に折り畳んで抜く。麻布袋も抜き取り、適度に乾燥させた後、円筒の内側に切鎌を入れ、下から上に引いて4分割し、小口を整える。

1)桶巻で4分割した平瓦をくさび形に成形し、麻布を被せた仕上げ台に置き、なで板で丁寧に整える。

2)紋様が彫られている木型を瓦頭部分に押し付けて、木槌で叩き、紋様を写す。

3)余分な粘土を木ベラ(あるいは糸)で切り落とし、水で濡らしたなで板で表面を整える。

4)仕上げ台から粘土が変形しないように注意をはらいながら分離し、小口を整える。

3. 焼き上げ

登窯(復元)の窯焚き

焼成は粘土を硬化させる工程で、乾燥させた瓦(素地)の窯詰→あぶり→本焚き→窯出しとなる。あぶりは徐々に窯の中の温度を300〜400度ぐらいまで上げて素地や窯自体の水分を抜く作業である。次いで火勢を1000度以上まで上げて高温を維持して本焚きを行うと粒子同士が焼結され、堅い焼き物へと変化する。その後冷まして窯出しとなる。あぶりから冷ましまで通常三昼夜ほどかかる。

古代には丘陵の斜面を利用してトンネルを掘った「登窯(穴窯)」と山腹のおおむね平坦な土地に穴を掘って築いた「平窯」で瓦を焼いていた。窯内は大きく燃料を焚く燃焼室、形作った素地を並べて置く焼成室、排煙のための煙道で構成される。窯焚きは瓦の良否を決める重要な作業だったため、窯元(親方)が自ら行うところもあれば、専門の職人を抱えるところもあった。

登窯は床が階段式のものもあり、瓦詰めは段差を利用して一窯で最大枚数が焼けるよう瓦を配置する。窯の中は、焚き方によっても火のまわりが異なり、窯の中全体が同じ温度にならないため、瓦の置く場所や煙のまわり方によって瓦に焼きむらが出たり、色が変わるなどばらつきがでる。しかしそういう瓦で屋根を葺きあげると趣のある屋根になる。

登窯(復元)にて窯焚き前の清め

登窯(復元)に窯詰めされた瓦

登窯(復元)で焼いた瓦