鬼瓦は大棟や下り棟の先端に、雨水が入らないように据え付けた飾りの瓦である。いつから鬼瓦と呼ばれるようになったのかは定かではないが、一般的に連想する二本の角をはやし、大きな口をあけた立体的な鬼瓦は室町時代(1336~1573年)以降のものである。飛鳥時代(6世紀頃~710年)から鎌倉時代の中頃(13世紀)までの鬼瓦は、「笵」と呼ばれる木型に粘土を押して抜き出した板状のものであった。紋様も初期のものは蓮華文と呼ばれる蓮の花の紋様で、鬼の面相が登場するのは奈良時代の8世紀以降である。表現されているオニは地獄にいる鬼ではなく、聖なる神獣をモチーフにし、その建物を災厄から守る願いが込められている。江戸時代に入り民家にも瓦が普及すると、鬼面ではなく、商売繁盛を願った恵比寿、分銅、鳳凰、龍、鶴亀、桃や蓮といった縁起ものが家を守るシンボルとして屋根を飾るようになる。