展示概要

今回紹介する若手グループthreeは福島で一昨年の3月11日に地震と原発事故の直接の被害を経験しなおかつその被災地で活動を続けています。それまで彼らは携帯ストラップやフィギュア、あるいは古新聞など日常生活の身近にあるものを使って、消費する都市と生産する地方とのギャップへの疑問を投げかける、社会性の強い作品を作ってきました。
原発事故から丸2年たち、今、彼らが感じる都市や人々とそれらの営み・振る舞いを「自分たちが感じる象徴としての原発(建屋)」と、「現実を映すスクリーン」という2つの作品を通して表しています。
1つ目の作品「自分たちが感じる象徴としての原発(建屋)」は、表面を屹立した15万1503個のしょうゆ差しが均一に覆い、高さ3mを超える大きなキューブを制作しました。このキューブは、原発の地下を除き地上に見える建屋の比率とほぼ同じものでより単純化させたものです。それらを覆うしょうゆ差しの個数は、災害によって福島県内への避難者数と県外への避難者数です。また、しょうゆ差しの色の7割はカラフルで3割は黒く濁った色水が入っています。黒く濁った個数の割合は、会期初日である3月14日、ちょうど2 年前のこの日に爆発した3号機の炉心損傷割合と同じ割合となっています。マスコミなどで頻繁に報道される「事実」と彼ら自身が経験している被害者としての「真実」の微妙なずれを否定も肯定もせず作品の中に表現し、見る側にその判断をゆだねています。
2つ目の作品「現実を映すスクリーン」に投影される映像は、同時期・同時刻の東京と居住制限区域である飯館村の映像です。それぞれが映す場所も「スーパーと生鮮食品売り場」、「同じコンビニ」、「お互いの場所で人通りが多い通り」、「運動場」など東京と福島で対応した場所です。今現在も、それぞれが現実として膨大な情報を受け取る画面、そこに映らず流されなかった現実は、ほぼ無として処理されてしまう画面を巨大化し自分たちが切り取ってきたお互いの場所の現実を映し色をつけます。
震災後尚、変化を怖れ視方を変えることを躊躇する現代社会において、彼らからの問いかけに真摯に向き合えればと思います。

<過去の作品>

  • Tokyo crowd
    /2012
  • Tokyo void
    /2011
  • Tokyo Surge
    /2010

作家プロフィール

three(スリー)

1986年 福島県生まれ  公式HP ►

<個展>

2012年 「three is a magic number 5」MEGUMI OGITA GALLERY/東京
「three is a magic number 4」shiseido art egg vol.6 SHISEIDO GALLERY/東京
2011年 「three is a magic number 3」TWS-EMERGING 2011 トーキョーワンダーサイト本郷/東京
2010年 「three is a magic number 2」西武渋谷店/東京
「three is a magic number」MEGUMI OGITA GALLERY/東京

<受賞歴>

2011年 「shiseido art egg vol.6」 入選
2010年 「トーキョーワンダーウォール公募2010」 大賞
2010年 「第5回タグボートアワード」 グランプリ
2010年 「大黒屋現代アート公募展」 入選
2009年 「TAGBOAT AUTUMN AWARD 2009」 入選
2009年 「NEXT DOOR vol.9」 入選
2008年 「For Rent! For Talent!4」 入選

<今回の作品コンセプト>

原発事故から丸2年たち、今感じる都市や人々とそれらの営み・振る舞いを「自分たちが感じる象徴としての原発(建屋)」と、「現実を映すスクリーン」という2つの作品を通して表します。
しょうゆ差しの作品では、個を表し、均一に大量生産されるしょうゆ差しの「入れ物」としての機能を使い、中に色水を入れ内外を彩ることで、無機質に純化していく都市や埋没していく個。現代の人・都市・群衆やそれぞれが与える影響・振る舞い・営みなどを表しています。
今回制作する原発(建屋)の作品では、表面を15万1503個のしょうゆ差しが屹立し均一に覆い、高さ3mを超える大きなキューブを制作します。このキューブは、原発の地下を除き地上に見える建屋の比率とほぼ同じものでより単純化させたものです。それらを覆うしょうゆ差しの個数は、災害によって福島県内への避難者数と県外への避難者数です。
また、しょうゆ差しの色の7割はカラフルで3割は黒く濁った色水が入っています。この割合は、会期初日である3月14日。ちょうど2年前のこの日に爆発した3号機の炉心損傷割合と同じ割合となっています。損傷と推定される3割分を、黒く濁った水をいれ、自分たちへの影響として表しました。象徴としての原発と目に見えない影響や脅威を、それらが生んだ避難者数や個・内面を表していた色で表現しようと思います。
スクリーンの作品は、以前制作した「Tokyo Crowd」(資生堂でのしょうゆ差し作品)からアップデートし、横3m縦1.7mという大きな画面サイズの平面を、裏表2面つなげたものを制作します。空のしょうゆ差しで覆ったウラとオモテ両面に、東京と福島の映像を映します。前回同様、映像そのものの色でしょうゆ差しの中に入っていた色を表します。今回、片側に映す東京ともう片側に映す福島の映像は同日同時刻となっています。
それぞれが映す場所も「スーパーと生鮮食品売り場」、「同じコンビニ」、「お互いの場所で人通りが多い通り」、「運動場」など東京と福島で対応した場所にしました。同じような場面におけるその場の群衆や個。その営み・振る舞いを撮影し切り取ることで、不変的なデジタルデータに変換した色の素材とします。また福島の撮影場所は、自分たちの住む福島市から一番身近で、そこに住むほぼ全員が避難を余儀なくされた飯舘村としました。(避難解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域に指定されています。)
今現在も、それぞれが現実として膨大な情報を受け取る画面。そこに映らず流されなかった現実は、ほぼ無として処理されてしまう画面を巨大化し、自分たちが切り取ってきたお互いの場所の現実を映し色をつけます。スクリーンの作品では、以前緩やかに波打っていた面を、何の抑揚もない現実を映す平面に変え、より無名化・匿名化しデジタルによって統制され依存している様をしょうゆ差しとそこに投映する映像で表します。
展示全体を通して、数々の変化を経て今も続く現在を表現することを目的とします。(3-three)

展示情報

会  期: 2013年3月14日(木)〜2013年4月25日(木)
開館時間: 10:00〜18:00(最終日は17:00まで)
休館日 : 土・日・祝日
入場料 : 無料
主 催 : 公益財団法人ギャラリーエークワッド
協 力 : 大正ポリエチレン株式会社

イベント

<オープニングパーティ>(終了しました)

展示初日にオープニングパーティを行います。どうぞご参加ください。

日  時: 2013年3月14日(木) 18:00〜
会  場: Gallery A4 向かい打合せコーナー(竹中工務店東京本店1階)

*申込不要/参加無料

<アーティストトーク>(終了しました)

日  時: 2013年3月27日(水) 18:30〜20:00
講  師: 3 three
聞き手 : 岡部 あおみ(美術評論家)
会  場: Gallery A4
定  員: 50名(要申込み、参加無料)
展示の詳細は、リーフレット をご覧ください。