開催にあたり
ギャラリーエークワッド館長 川北 英

2011 年3 月11 日の東日本大震災とそれに伴う津波や原発事故は、日本だけでなく世界に大きな衝撃を与えました。昨日までの生活や風景が、一瞬にして失われてしまった『事実』を前に、私たちはそれが現実に起こっていることだとはにわかに信じることができませんでした。私たち日本人は、この100 年を区切っても、関東大震災(1923 年)・南海地震(1945 年)・伊勢湾台風(1959 年)・チリ津波(1960 年)・北海道南西沖地震(1993 年)・阪神淡路大震災(1995 年)など数えきれないほどの災害を経験しています。しかし、その都度それを乗り越えてきました。
被災地の復興に関して多くの機関や組織・人々が提言や活動を行ってきました。巨大な自然災害を前にして従前の街づくりの考え方や社会システムでは不十分だというのが共通した認識ですが、まだまだ意見が集約されるには時間とエネルギーが必要のようです。ギャラリーエークワッドでは、東日本大震災の数多くある被災地の中から、人口約一万五千人の宮城県「南三陸町」に焦点を絞り二つのプロジェクトを紹介します。

MIT JAPAN 3.11 INITIATIVE
MITと宮城大学他によって行われた復興プロジェクトで、2年間にわたって現在も継続中の復興プロジェクトです。地元の方々との共同作業の中から導き出された南三陸のあるべき将来像を紹介します。会場の設定は、その活動中に作られた集いの場をイメージしています。外壁にテーピングされた津波の高さと合わせて、南三陸での出来事を追体験して頂ければと考えています。

写真とメッセージ展
地元にある3つの中学校の3年生約100人によるインスタントカメラを使った写真展。南三陸で学び育った彼らが、今回地震や津波の経験を経て、「今の南三陸」をどのように見つめているかを写真とエッセーで紹介するものです。南三陸の将来を担う彼らの思いを表現してもらいました。

阪神淡路大震災から18年が経過し、徐々に人々の記憶が薄れてきたといわれています。確かに災害は負の記憶・経験ではありますが、これからのコミュニティーや街づくりのヒントに生かすべきでもあります。今回の展示が少しでもそれらに役に立てばと思っています。