『approach』2002年秋号では、つばた夫妻のスローライフを特集し、多くの反響がありました。10年を経た今もなお、自分たちの手で野菜を育て日々の食べ物をつくり、自給自足の生活を送られている、二人合わせて173歳のご夫妻の生活を取材しました。
建築家の津端修一さんは、ニュータウン全盛の時代、自らが高蔵寺ニュータウンの計画に関わりながら、コンクリートの高層集合住宅が本当に豊かな暮らしを創り出せるのか疑問をいだき、ニュータウンの中に里山と雑木林を取り戻そう、という提案をした。その後、1985年に高蔵寺ニュータウンに300坪の土地を購入し、ドイツのクラインガルテン(市民農園)を参考に、自ら畑を耕 し、樹を植え、英子夫人と約30年かけて、栗やサクランボが実る雑木林と、四季を通じて野菜が収穫できる豊かなキッチンガーデンを作りあげた。
都市生活で求めた便利で快適な暮らしは、多くのエネルギーや資源の消費を加速させてしまった。今こそ「他人任せの輝かしい未来でも、破壊的未来でもなく、自分で出来る“終わりなき日常”を豊かにする暮らしへの関心は高まってきています」という夫妻の言葉には重みがある。夫妻の暮らしには、家族への愛情と自らの創意工夫で暮らしを楽しみ、心耕す豊穣な生活の智恵が詰まっている。それは、歳を経てますます輝きをますご夫婦の“ときをためる暮らし”の実践による証明なのである。