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THE SIX CATEGORIES
History & Heritage

 

歴史や伝統というテーマは、17世紀に神社・仏閣の造営を業として創業した竹中にとって本業と関わることであり、常に大切な理念として継承されている。『approach』においても、「中之島―“一所懸命”の土地と建築の歴史」(1968年 冬)に始まり、「日本の大工道具」(1975年 冬)、「保存と再生」(1977年 冬)等々、各年代に様々な事例を紹介する特集が組まれている。「唐招提寺金堂」は、平成の大修理の開始時(2001年 夏)と、修理の完成時(2009年 冬)と2度取り上げた。また「DOCOMOMO」(2009年 春)では、モダニズム建築の保存に関する活動と現状をレポートした。このように昔の知恵から学び、将来に向けて生かしていく「温故知新」は、将来の指針が見えにくい現代においては、一層重要な視点になっていくだろう。

 

1987 冬 ウィリアム・モリスのユートピアーケルムスコット
19世紀末のアーツ・アンド・クラフツ運動の父 ウィリアム・モリスは、近代デザインのパイオニアであり、家具、壁紙、テキスタイルなどに大きな影響を与えた。また詩人、社会改革者、哲学者としても多彩な才能を発揮した。テムズ河上流にあるモリスの休日用別荘ケルムスコット・マナーには、彼の作品と所持品が数多く収蔵され、彼の精神を今に伝えている。

 

2008 夏 過去を未来へー廃墟から復興したワルシャワ歴史地区
ワルシャワの旧市街は第二次世界大戦末期、ポーランドへ侵攻したドイツ軍により徹底的に破壊された。しかし街の運命を予感した大学教授や学生たちによって詳細な記録が残され、戦後、市民の情熱と努力によって街や王宮などが忠実に復元された。街を再建した市民の不屈の意思が認められ、歴史地区は1980年に世界遺産に登録された。

 

2009 冬 唐招提寺金堂ー平成の叡智と技術が天平建築を未来へ渡す
鑑真は多くの苦難の末に日本に渡り、759年唐招提寺を開いた。「天平の甍」として親しまれている国宝・金堂は、鎌倉・江戸・明治と何度か大修理が行われたが、阪神淡路大震災を機に建物の調査を実施し、2000年1月より平成の大修理が始まり、初めて国宝・三尊像の他、すべての仏像が運び出された。2009年11月に落慶法要を迎えた。