1962年に出版されたレイチェル・カーソンの『沈黙の春』によって、環境に関する問題が一般にも広く知られるようになり、その後の50年間はまさに自然破壊や環境問題が年々深刻になり、いまや地球の存亡に関わる全世界的な課題である。『approach』では1970年代から「自然と人工ー自然環境と人工環境」(1972年 冬)、「人と自然を共存させる哲学ーアメリカの方法論にみる」(1973年 春)、「スポケーンの環境博」(1974年 夏)に始まり、「ナショナル・トラスト」(1980年 夏)をいち早く紹介した。最近では「クリチバの奇跡ーブラジルの環境都市に学ぶ」(2005年 秋)、「IBAードイツに学ぶ、持続的な都市・地域の再生」(2010年 秋)など、海外の事例から解決の手法を学ぶとともに「森を守る」(2010年 夏)など、日本の森林のもつ本来的な力を紹介するなど、環境や自然は、毎年取り上げられる重要なテーマとなった。
1980 夏 ナショナル・トラストー歴史と現状
イギリスのナショナル・トラスト運動は、19世紀末に3人の市民によって始められた。「1人の1万ポンドより1万人の1ポンドずつ」をモットーに、美しい自然と歴史的建造物を人々から寄付金を募って買い取り、或いは寄贈を受けて保護している。この運動は1976年冬号の木原啓吉氏の報告により、多くの人たちに知られるようになった(P13参照)。
2007 春 セントラルパークー荒廃からの再生
19世紀に森と湖を造形して造られたニューヨークのセントラルパークは、150年を経た今も人々が憩う街のシンボルである。しかし1960年代から70年代後半に荒廃が進み、犯罪の温床になっていた。公園再生のために1980年に「セントラルパーク管理財団」が設立され、樹木や水景を復元、道路や建物を修理・再生して見事に甦った。
2010 夏 森を守る
日本では古来、森に神が宿ると考えられ、山や木など自然そのものを崇め、鳥や虫、獣など森に生息する多種多様な生物の生態系を守ってきた。しかし明治時代に多くの鎮守の森が伐採され、戦後の住宅需要により単一の針葉樹を植樹、日本の植生である照葉樹の森がほとんどなくなった。台風・地震・火災に強い本来の森を、どのように再生し次世代へ受け渡せるか、鎮守の森から学ぶ。