かつてはなんでも獲れた海の漁獲量が極端に減少している原因の一つには、干潟や浅場、とりわけ埋め立てなどによる多くのアマモ場を失ってしまったことが原因だと考えられています。NPOなどの努力で、海の草原で稚魚のゆりかごでもあるアマモが少しずつ増えてきており、そこでは稚魚が育っています。しかし、夏には貧酸素水塊が発生し、せっかく育った生物が死んでしまうという問題が発生しているのです。また、一方で漁業は、生物の減少とともに、漁業高、漁業者数ともに減少の一途をたどっています。漁業に就業している人数は、1970年頃の200,00人から5,000人程度に減少しました。漁業は、栄養分を海から吸い上げ、食物・栄養分・生物循環システムを回すもっとも重要な担い手の一つです。今ならまだ間に合います。漁業者・漁法も残っています。将来が見えれば後継者も育つ可能性があります。漁業者が明るい未来を信じ将来に希望を持って頑張ることで、私たちは豊かな海を次世代に残すことが出来るのです。
2009年10月UNEP(国連環境計画)で発表されたレポート”BLUE CARBON THE ROLE OF HEALTHY OCEANS IN BINDING CARBON”によって「大気中の二酸化炭素吸収源として、現在注目されている森林に加えて、海洋生物による二酸化炭素吸収に注目すべきである」とされ、そこには「陸より海の方が炭素の固定量は多く(3:7)、その固定速度は熱帯雨林の2〜11倍である」とされています。 こうした海洋生物による二酸化炭素吸収には、今後世界的にも注目が集まると予想されています。
行政の取り組みは下水処理場などの「モノづくり」や法律による規制などが中心に行われることが多いのが特徴です。しかし、それだけでは海は豊かになっていないのが現状です。東京湾の豊かさに影響を与えているものの大きな一つが私たちの暮らし方、ライフスタイルそのものです。日本は世界第6位の海岸線大国であり海洋民族ともいえるのです。その割には、近代になってからは、海に親しみ海の文化が十分に育まれているとは言えません。私たちの暮らし方を海と結び付け、豊かな海を育むライフスタイルや食文化を見直すことが出来れば江戸前の魚が活き活きと揚がる美しい海を取り戻すことが出来るのです。